第二章2 忍びよる影

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 俺はスマホでメッセージを送った後、たっちゃんに顔を向けた。 「ありがと、たっちゃん。助かったよ」 「礼を言うのはこっちの方や。ばあさんを助けてくれてありがとな。あの男、わしの留守中に舐めたマネしよって。今度見かけたらシメたるわ」  たっちゃんは不愛想だが客にも誠実で、何より京子ちゃんを大事にしてる。肩に担いでいた網を怒り任せに置く姿は正に一仕事終えた殺し屋のようだ。俺が助けなかったら今頃あの男、たっちゃんに八つ裂きにされてたんじゃないだろうか。  いい気味だと少し笑っていると、網から出した魚をさばき始めるたっちゃんの後ろから、京子ちゃんがひょこっと顔を出した。 「ありがとね、陽くん。はい、これサービス」  のんびりした声で京子ちゃんは渡した千円札と、刺身の詰め合わせを俺に手渡した。  大したとこしてないのになぁと思いながら、断るのも悪いと思ってありがたく頂くことにした。今日の晩御飯は海鮮丼で決まりだ。 「ねえ京子ちゃん、あいつ知ってる?」 「いんや知らん。フリーなんちゃらとか言っておったけどね」  商品の陳列を整えながら京子ちゃんは俺の質問に答えた。  たぶん、フリーライター。企業に属してないから影響範囲は狭いものの、自由に行動できる分厄介だ。おそらく自分が納得するまでこの島から離れないだろう。  文化祭のことがばれたら美天ちゃんに案内するどころか、演舞が中止になりかねない。文化祭の口止めも学校にした方がよさそうだ。
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