6人が本棚に入れています
本棚に追加
「そこまでや」
俺が口を開く前に、野太い声と一緒に背の高い白髪の大男が俺と男の前を遮った。
「あ、たっちゃん」
俺が声をかけると大男、達也爺さんことたっちゃんは俺の方に不愛想な顔を向けた。
たっちゃんは京子ちゃんの旦那さんだ。
額には古い傷跡。色の抜けた白い髪は老人の特徴そのものだが、鍛えられた筋肉は漁師のインナーとゴム手袋でピチピチに張り付き、とても七十歳を超えた老人には思えない。
「若いの、邪魔や。さっさと退け」
下手したら百戦錬磨の殺し屋にも見えるたっちゃんに睨まれ、男は顔を引きつらせた。
「じゃ、じゃーな。チャラそうな高校生」
男はひらひらと手を振りながら背を向け焦ったように去っていった。
男の派手な柄シャツが夕陽に反射してねっとりと俺の脳裏に張り付いた。
苦手なタイプだ。美天ちゃんを嗅ぎまわっているのもあるが、人の僅かな動きにも敏感に反応する観察力があった。美天ちゃんに関わっている人は少ないとはいえ、念のため隠し撮りした男の写真をクラスメイトと先生に送って、注意喚起をした方がいいかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!