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(あ……)
雑踏の中、私の足元に一枚のおみくじが飛んで来た。
つい拾ってみると、『末吉』と書いてあるのがちらりと見えた。
「あ、すみません。それ、俺のです。」
そこに立っていたのはリュウ。
「あの、これ…」
私がおみくじを渡そうとしたら、リュウは複雑な顔で片手を出した。
「今年は年男だから、気合いを入れては引いたのに、末吉なんてね。」
「え?そうなんですか。
私も今年、年女です。」
「タメですね。
おみくじは引きましたか?」
「はい、大吉でした。」
「えー……!いいなぁ……」
その言い方があまりにも情けなかったから、私はバッグからおみくじを出してリュウに差し出した。
「え…?」
「あげます。」
「えっ!?」
「だから、元気出して下さい。」
「えーっ!?」
リュウは私が驚くくらい、びっくりした声を上げた。
「君、優しいんだね。」
「え?」
おみくじをあげようとしたくらいで、そんなこと言われるとは思ってもみなかった。
「あの…良かったら、お茶でも飲みませんか?って、昭和のナンパみたいだけど、でも、お願いします。
君ともっと話してみたいんだ。」
リュウのストレートな申し出に、思わず心がざわめいた。
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