プロローグ

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プロローグ

 聖龍せいりゅう杏奈あんなの思考は、嵐の真っただ中のように完全に荒れ狂っていた。  思えば生まれたところから私の人生はおかしかったのかもしれない。  それというのも、杏奈の家は暴力団、天鬼組という会長の家だったのだ。  母親はアメリカ人だったらしく日本の暴力団がどんなものかさえ知らない女性だった。  杏奈が生まれるころにはすっかり父親の天鬼剛に愛想をつかしていた。  そんなわけで母は生まれたばかりの杏奈を残してアメリカに帰ってしまった。  父親とそのほか若頭、舎弟、若中と言われる人々がいて杏奈はそんな男ばかりの中で育って来た。  幼いころはそれでもよかった。  だが、学校に通うようになると予想通りあの子に近づいてはだめとか、友達になってはいけませんと言われるようになって、杏奈には友達というものが出来たことがなかった。  それでも家に帰ればみんなが可愛がってはくれたのだが、やはり年頃になると反抗期がやって来て悪い友達が出来て夜遊びをしたり学校をさぼったりするようになった。  そんな頃、ある夜父親が乗った車が一人の男をはねてしまう。
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