英雄の娘

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 一、二、三時間と時が過ぎ、授業を受ける度にリンのメンタルもすっかり元に戻りつつあった。  真剣に各教科の先生の話に耳を傾け、休み時間には級友たちとの会話を楽しむ。そんな当たり前の日常が、リンの悩みを薄れさせていったのだ。  そして迎えた昼休み。教科書やノートを机に仕舞い、別クラスのソラを誘って食堂へ向かおうと席を立った、ちょうどその時だった。 「リンちゃーん! 高等部の生徒会のおねえさんが呼んでるよー!」 「……ねぇね?」  教室の出入り口近くの席の級友から、大きな声で呼び掛けられた。  高等部、そして生徒会……とくれば、自身の姉、アスカの顔が真っ先に思い浮かぶ。  一応ある程度は立て直したとはいえ、やはり少々会うのが気まずい……が、流石に無視するわけにもいかない。どちらにせよ、家に帰れば顔を合わせることになるのだし。  気は進まないながら、姉が待っているであろう廊下に出ると、そこには。 「ごめんね、お昼休みに呼び出しちゃって」 「やあ、リンちゃん。実はボクもアスカちゃんから呼ばれていてね」  アスカと、親友のソラの姿もあった。そしてついでに、見慣れない男子生徒……背は姉より高く、生徒会の腕章を着けていることから、アスカと同じ執行部のメンバーだろう。 「えっと……それはいいんだけど、なんの用事? あんまりいい予感しないんだけど……」 「その件については、生徒会室で話すよ。お昼でも食べながらね」  そう、今から何を食べようかという時に声をかけられたので、すっかり空腹状態。この申し出は、リンにとっては願ったり叶ったりだ。 「副会長、購買で適当に惣菜パンと飲み物を買ってきてくれる? もちろんお代は私が持つから」 「わかりました、会長」  嫌な顔ひとつせず、従順にアスカの頼みを聞く副会長。リンはここではじめて、〝生徒会長〟としての姉、アスカの姿を意識した。もちろん、今までもそういう機会がないわけではなかったのだが。  一度意識し出すと、前を歩く姉の背中がいつもより大きく見えてくる。姉の後ろ姿、制服姿なんてほぼ毎日見ているはずなのに、まとう雰囲気が家にいる時とは全然違うというか。リンにはうまく言語化はできないが、とにかくいつもよりカッコよく見えていたのだ。 「……さ、着いたよ。ここが生徒会室」  なんて、姉の背を見ながら歩いていたら、あっという間に生徒会室の立派な扉の前に到着していた。
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