英雄の息子

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 なんだか、何もかもがシンの都合のいいように転がされているような気がしなくもない。  だが真面目なルリは責任感からか、そうとわかっていても今の甥っ子を野に放つことはできなかった。  だったら、自分で手綱を握っていた方が良い。手の届くところにさえ置いておけば、いつか必ず矯正の機会が訪れると信じて。 「じゃ、学校行ってくっかな。今からでも昼休みには間に合うだろ」 「それはいいことね。で、手ぶらで行くつもりなの?」 「俺ァ置き勉派だからな。学校で使うモンは全部学校に置いてあんだよ」 「はぁ……じゃ、今日からちゃんと持って帰ってきて。それが学校通ってるって証拠になるから」 「はぁ? んなこまけーこと……」 「ウチに住むならルールに従ってね?」  つい口ごたえしそうになるも、ルリの笑顔の圧力に押し黙るシン。せっかく最低限の衣食住を確保したのに、ルリの機嫌ひとつで全てがパァになることを考えれば、揉め事を起こすのはなんの得にもなりはしない。 「……へーい、わかりやしたー。置き勉派卒業しまーす」  そんな気の抜けたような返事をしながらも、そそくさと退室。長居するとまた無用な反感を買いかねない今、これが最善だと判断した。  怒らせたら怖いのは姉譲り。その姉を実母に持つシンは、そのことをよーく知っている。 「全く。いつまでも世話焼かせるんだから」  呆れながらも、優しい微笑みを浮かべてシンの背中を見守る。なんだかんだ言いつつ、やはりルリにとっては弟のような存在。あまり強くは突き放せないのだ。  だからといって、甘やかすつもりも毛頭ないのだが。 「義兄(にい)さん、姉さん……見ててください。きっと私が、シンのことを真人間に矯正させてみせますから……!」  自身の敬愛する姉と、上司でもある義兄に誓う。あなた方の息子を、きっと立派にしてみせると。 …………
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