椎名くんは震えない

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 本命の私大の受験がようやく終わり、あとは発表を待つだけとなった私と彼氏の椎名くんは、久しぶりのデートで椎名くんの家にいた。  外は寒いからどこにも行きたくない、と椎名くんがわがままを言ったからである。  まあ、その意見には私も全面的に賛成するが。 「まさかこんな雪が降るとは思わなかったなあ」  椎名くんの家に来るまではちょっと雪雲が近づいているかな、くらいだったのに、気がつけば外は真っ白になっていた。 「藤川、じゃんけんしようか」 「何その唐突なじゃんけん。もう、どっちが灯油を取りに行くか決めるじゃんけんだとしか思えないんだけど」  椎名くんはちょっと頭がおかしいと思う。 「椎名くんちなんだから椎名くんが取りに行ってよ」 「場所はもう言っただろ。藤川でもミッションは可能だ」 「可能だけどさ。最低だぞ、椎名くん。それでも男か」 「寒さに男も女も関係あるか。時代は今、ジェンダーレスなんだよ!」 「こんな時だけジェンダーレス掲げるなんて最低だって言ってんの」 「だから、平等にじゃんけんで決めようって言ってんだよ。俺が負けたら俺が取りに行くからそれでいいだろ」  なんだかんだ丸め込まれてじゃんけんをすることに。   「じゃーんけーん」 「待て。何回勝負にする?」 「一回でいいんじゃない」 「いや、念のために一応三回にしよう。恨みが発生しないようにな」  何の恨みだ。面倒くさいなあ、もう。
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