椎名くんは震えない

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「じゃーんけーん、ぽんっ」  私はチョキを出し、椎名くんはグーを出した。 「あーあ、負けちゃった」 「よっしゃああああ!」  椎名くんは全力ガッツポーズをする。もうやだ、こんな彼氏。 「早く次のじゃんけん」 「え?」 「三回勝負だって椎名くんが言ったんじゃん」 「えー。一回だったら勝ち確だったのに」  椎名くんは口を尖らせてぶうぶう言う。もう絶対勝ってやる。 「じゃんけんぽんっ!!」  私の怒りが天に届いたのか。その後私は二連続でじゃんけんに勝った。 「やった! 椎名くんの負け! ほら、灯油とりに行ってこーい!」  だんだん部屋も冷えてきている。窓が少し開いているんじゃないかと思うくらい、外気が侵食して来ていた。 「藤川がこんなに冷たい女だったとは……もともとクールだなとは思ってたけど、ここまでとはな。さては正体雪女だろ。俺を凍らせるのが目的か。こっわ」 「雪女でいいから早く行ってよ」 「こっわ」  椎名くんは最後までぶうぶう言っていたけど、仕方なく部屋を出て行った。  私ってそんなにひどい女かなあ。
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