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影武者の運命(さだめ)
「あんた、死んでくれんか?」
白い壁で囲まれた机と椅子のみの無機質な部屋で、黒いスーツ姿の男は単刀直入にそう言った。
改めて考えてみる。どうやらこの男、俺に死んでもらいたいらしい。
「なぜ?」
俺は最も気になることを聞いた。
理由も分からずに、死ねる訳がない。
男は笑った。
「二つ返事で断らなかったのは、あんたが初めてだ」
男は椅子の背もたれに大きな身体を預け、ゆっくりと説明を始めた。
正義の聖戦。
今この国で行われている戦争。毎日のように町が破壊されて、多くの犠牲者が出ている。俺の妻も息子もこの戦争で死んだ。
「この戦争を止める。そのために命を捧げられるか?」
無表情のままそう言う男の顔が、妙に不気味に映った。
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