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スッと襖が開く。しかし、薄暗い行燈の光に照らされたのは、旦那様の姿では無かった。
「お義父様? 」
そこにいたのは、夫となった男の父であり、この家の主人。
義父は部屋に入ってくると、私の前に腰を降ろす。
「あの、旦那様は? 」
キョロキョロと探すけれど、夫の姿は無い。義父がニタリと嫌な笑みを浮かべて言った。
「柿はよくなるかい? 」
それは夫となる旦那様の台詞。どうしてそれを、義父が言うのか。
「おやおや、実家で教えて貰わなかったのか? 」
「え、でもそれは、旦那さま、の…… 」
言い掛けて、言葉が詰まる。義父のゴツゴツした手が自分の手に重なったからだった。
「可愛いねぇ。それなら儂が教えてやろう。柿がよくなるかと聞かれたら、『なります』と答えるんだよ。そうしたら儂が『登って、ちぎって食べてもいいか』と聞くから 」
ふぅっと耳元に息が掛かり、ゾッとする。
「お前は、『どうぞ、お食べください 』と言うんだ 」
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