無題1

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気づけば、あの頃下を向いて歩いていた小学校の通学路に入っていた。 空気は、なんだか入り組んでいる香り。 車のガス、どこかの家の夕食、ファストフード店の油、木々の呼吸。 世界は夜に息を吹き返したようだ。 きっと僕は時間の繋ぎ目を歩いている。 刹那に光る星灯も、橙色の夕陽がテラス地平線を形作る民家の影も、意味を求めることなく歩く僕でさえも、その事象はちっぽけな僕らが観測可能な連続的現象に過ぎない。 けれど、僕はその中を歩いている。 時間と共に歩いている。
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