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放課後。
黄色味を増した午後の日差しのなかで、スクール水着姿のリトがせっせと死体を解体していた。
部活中の生徒たちの掛け声や、吹奏楽部の演奏の音が、遠く微かに聴こえている。
そこは、数年前に閉鎖された1年女子更衣室のシャワールーム。
夏休み期間中に、女生徒が何者かにレイプされるという事件をキッカケに、出入口が板で完全に封鎖され使用不能になった施設だった。
校内にありながら、誰の目も届かない、死角のようなスペースになった場所。
そこに、リトが修理するべく集めた肉人形がまとめて2体転がっている。
同級生に売春を強要していた『優等生』と、性加害常習犯の『体育教師』
血と汗にまみれていても、リトのスクール水着姿は輝くように綺麗だった。
まるで、二人だけの課外活動。
その名も『シリアルキラー部』。
活動内容は、殺人、死体処理、死体加工。芸術的な死体の創造。独創的な連続殺人事件で、世間に話題を提供すること。
ぼんやりとした頭で、そんな現実逃避の妄想をするくらいしか、俺には正気を保つ手立てがなかった。
騎乗位みたいな体勢で、体育教師の胴体にまたがって、その臓物をざくざくと切り裂いているリト。
不意に、男の臓器を持ち上げて、顔の横に持ってくると、天使の笑顔を浮かべた。
「腐れ外道の心臓、一緒に食べる?」
思わず吐き戻しそうになって、激しい嗚咽に身を屈めた俺を、リトはケラケラと笑いながら見つめている。
体育教師の頭部、その上半分は、枝葉を裁断された街路樹みたいに不自然な印象で断ち切られていた。
頭頂部分の頭骨が綺麗にお椀状に取り外されて、脳みそにあたる部分がまるごとくり抜かれているからだ。
脳みそが空っぽになった奇妙な頭部は、中身の味噌を食べ尽くされた蟹の甲羅を思わせる。
リトは、『優等生』の腹の中から摘出した子宮を、『体育教師』の頭脳のなかに移植しようとしていた。
「あれぇ。ねぇねぇマサムネぇ」
ソフトボール大ほどの赤い子宮を、並べた両手のひらの上に乗せたリトは
「この娘、妊娠してるよぉ?」
不思議そうに首を傾げる。
「彼氏がいたって噂も無いのに、変だなぁ」
リトは、クスクスと笑い出して。
「この娘、実の父親にレイプでもされてたのかなぁ?」
胸の奥にある大切な何かが、闇の底に沈んでいくような感覚がした。
同級生を脅迫して、売春を強要していた少女、その心の闇が、俺のなかにまで侵蝕してくるような気がした。
『優等生』の膨れ上がった子宮を『体育教師』の頭骨のなかに移植したリトは、満足げに微笑む。
「『子宮でしかモノを考えられない動物』の完成だよ♪」
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