プロローグ

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プロローグ

閉ざされた重厚な扉が左右に開かれると、世界が一気に変わった気がした。 ステンドグラスから射し込む眩い光、チャペルの隅々まで響き渡るオルガンの音色、そして拍手で祝福してくれる列席者の笑顔… 注目を浴びた真菜(まな)は、思わずはにかみながら視線を落とす。 「行くぞ」 声をかけられ頷いた真菜は、エスコートされながら1歩ずつバージンロードを歩いて行く。 「うわー、綺麗」 呟く様なうっとりとした声が聞こえてきて、思わずどうも…とばかりに頭を下げる。 (きっと私じゃなく、ウェディングドレスを見てるんだろうけどね…) 心の中で苦笑いする。 実際、今はベールで顔が覆われているし、うつむき加減で歩いている自分の顔なんて、良く分からないだろう。 「新郎、すごくかっこいいねー」 (あー、それは本当にそうですよねー) 小さく聞こえてきた別の声に、真菜は他人事の様に頷いた。 軽く曲げた左腕を真菜に掴まらせ、ピンと背筋を伸ばして歩くその横顔を、ちらりと見上げてみる。 (うーん、整ってるわー。まさに端正な顔立ち。シャープなフェイスラインにキリッとした目元。あとなんだろう、気品が溢れてる感じよね) そんな事を考えているうちに、やがて二人は祭壇の前にたどり着いた。 1段ずつゆっくりと階段を上がり、牧師の前に並んで立つ。 (いよいよね。私はこれからこの人と、永遠の愛を誓い合うの。この人…この…) 真菜は、向かい合った新郎の顔をじっと見つめる。 (ところでこの人…誰?)
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