第一章・旅立ち

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◆ 光と闇の神話  村を出て初めての夜、二人は野宿することになった。 「キキ、話さなくてはいけない大事なことがあるの」 「大事なこと?」 「エルフから聞いた昔話よ。今に繋がるとても大事な話だから、よく聞いて」  前置きして、ククはキキに昔話を語るのだった。 「遥か大昔、光の神々と闇の神々との間で、世界を巻き込むほどの大戦争が繰り広げられていた。  争いは何百年何千年と続いたが、一向に収まらない。  そこで、両方の神々はそれぞれ人間を創造した。  闇の神々は、『闇の魔法使い』という闇の人間をつくり、続いてゴブリンとオークをつくった。  光の神々も、『光の魔法使い』という光の人間をつくり、続いてエルフとドワーフをつくった。  神々は戦争のルールも決めた。勝利の条件は、先に『神の聖杯』を手に入れること。これらルールの下で、神々はこの二種類の人間に代理戦争をさせた。  こうして、光と闇の戦いがはじまった。  人間は、神のしもべとして、また戦争の道具として、生まれたのよ。だから、神の命令や掟は絶対に守らなくちゃいけないの。  私たち光の魔法使いの使命は、光の神々のために闇を滅ぼすこと。神のためなら、どんな約束も絶対に破ってはならない。  戦うためには、命を犠牲にする覚悟も必要よ」  それから、ククは旅中で魔法の練習に励んだ。小枝の扱い方にも慣れ、ククの魔法は日に日に上達していった。それに対して、魔法を使えないキキはただ戦闘を見守るしかできなかった。  今日も、ククの練習するところを見ては、自分の弱さにがっかりして、キキは思わず下を向く。すると、足元には太い枝が落ちていた。  自分も小枝があれば、魔法が使えるのではないか。キキは試しにその太い枝を拾い、何度か振り回してみる。硬くて丈夫な質感で、普通の細い枝より少し重いけど、楽に振り回せる程には軽い。  しかし、振り方回し方を工夫しても、魔法を使うことはできなかった。やはりがっかりしたキキだが、いつかは使いこなせると思い、太い枝を取っておくことにした。
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