第二章・ドワーフの村

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第二章・ドワーフの村

◆魔法の修行  ドワーフの村では、住人のドワーフの多くが職人の仕事に就いていた。  ドワーフたちは人間と違い、道具や必要な物を自分の手で作り、それを使って生活していた。家も一つ一つが、人間のものよりも高度に進んだ技術で造られ、外観もまた違っていた。  また、ドワーフだけでなく、生まれ故郷 を滅ぼされた光の魔法使いたちも旅人として村に滞在し、襲撃に備えて日々訓練をしていた。  カカとケケ、二人の男も同じで、訓練の合間に休憩を挟んでいたところだった。 「戦いたくないな……」 「仕方ない。全部神様の決めたことだから、頑張るしかない……この戦いが終わったら、俺、結婚するんだ」  戦いで疲れたカカを、戦友のケケは慰めてあげると、自分の夢を語った。ケケの話を聞いて、カカも同様に将来の夢を語る。 「そうか。俺は……のどかな村でのんびり暮らしたいな」  カカとケケ、戦友同士の二人は次の訓練まで、共に語り合った。  同じく後から村についたキキとククも、それぞれ接近攻撃と魔法の修行に打ち込むことにした。  修行を重ねるうち、ククはさらに魔法を上達させていった。同時に自信もつけていった。自分一人で、こんなにできる。頑張れば、自分一人でも何でもできる。そう思い込むようになってククは、偉そうな態度を取ったり自分勝手に振る舞ったりすることが増えた。キキに対しては、特にそうだ。  キキの方は、棒振り攻撃が上達し、筋肉も強く鍛えられた。しかし、魔法だけは唯一できるようにならなかった。それでも諦めず練習を続けるキキ。 「こいつ、魔法も使えないのに棒を何度も何度も振り回してる!」 「本当だ! 魔法が使えないやつは頭も使えないんだ!」  笑い声が聞こえてくる。キキが振り向くと、カカとケケが彼を指差して馬鹿にして笑っていた。  その様子を見ていたククはというと、直接声には出さなかったが、馬鹿にするような目でキキを見ていた。  キキはとても恥ずかしくなった。 「敵が来たぞ!」  襲撃の知らせを受け、村にいた光の魔法使いたちは一斉に集まり、攻撃態勢を整えた。  村の向こうから、きな臭い気配が。  今度は、闇の魔法使いの中でも特に手強いドド隊長が、軍団を率いて襲いかかって来た。 「ドド隊長の軍団だ! 光の巨神のためなら、自分の命も捧げよ!」  リーダーの号令とともに、光の魔法使いたちは攻撃を開始した。  ドド隊長も、手下たちに号令を下す。 「攻撃せよ!」  光と闇、二つの軍団の間で、無数の魔法弾が激しく飛び交った。  今度の戦いも、また苦戦させられた。手下の魔法使いたちもそうだが、ドド隊長の魔法はもっと強力だ。その力はドド一人だけで、村にいる光の魔法使い全員に匹敵するほどだった。  ドド隊長と手下たちの攻撃に苦しめられるキキたち。それでも、仲間と力を合わせて、手下たちを次々倒していった。  残るは、ドド隊長のみとなった。 「気をつけろ! 一人とはいえ、相手はドド隊長。魔王も認める強い奴だ!」  仲間の一人が叫ぶ。  緊張の中、ドド隊長は指先に力を込めて、周囲に魔法弾を放った。  複数の魔法弾は、一つ一つが大きく強い輝きを放っていた。そして、地面に当たると大きな音とともに大きく弾けた。その威力は凄まじく、仲間たちを大きく傷つけた。  仲間たちが傷つく様子を見て、キキは怒りを爆発させた。 「みんなを傷つけるなんて、許さない!」  怒りのまま、キキはドドめがけて枝を振り回しぶつけようとかかった。 「キキ! ダメ、下がって!」  ククの叫びも聞かず、キキはドドを枝で殴りつけようとした。  しかし、突如として闇の障壁が張られ、攻撃は弾かれた。 「その枝で私を倒そうというのか。だが無駄だ、全員ここでくたばるが良い!」  ドド隊長はそう叫び、巨大な魔法弾を生み出した。 「キキ! 逃げて!」  ククは必死に叫んだが、キキは聞かない。巨大な魔法弾が勢いよく、こちらへ向かってくる。  キキは枝で魔法弾を受け止めた。自分の身を、みんなを守ろうと、とっさに枝を振りかざしたのだ。  ところが、流石の太い枝も、強力な魔法弾の威力に耐えきれず、ついには折れてしまった。枝はただの木屑と化し、使えなくなった。  絶望に陥るキキ。  それに対してドド隊長は攻撃の手を止めるどころか、キキ目がけて執拗に魔法を放った。  何度も攻撃を受けて、キキは瀕死状態に。そしてドド隊長はキキを睨みつけ、最後のとどめに巨大な魔法弾を放った。  その時だった。  目の前に光の障壁が張られ、攻撃は弾かれた。間一髪、ククが魔法で助けてくれたのだ。 「今度こそ、くたばれ!」  怒ったドド隊長は、再びとどめを試みる。 「そうさせるか!」  カカとケケが、ドド隊長の前に飛び出した。 「ここは俺たちに任せて、キキを運んでくれ!」 「わかった!」  ククは負傷したキキを背負い、急いで小屋へ運んだ。小屋では同じ人間の女性、ココがキキの手当てをしてくれた。 しばらくして、キキは目を覚ました。
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