第二章・ドワーフの村

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 ◆喧嘩した姉弟 「クク……」  キキのすぐ目の前には、ククがいた。 「だから言ったのに! あの時変に出しゃばるから、こんなことになったのよ!」  ククはものすごく怒っていた。キキは心配をかけてしまったと、申し訳ない気持ちになった。 「あなた一人のせいで、みんなに迷惑がかかったのよ! 魔法が使えないあなたは、みんなの邪魔よ!」  邪魔だ。この言葉に、キキは歯止めが効かなくなった。 「違う、あれはわざとじゃない! ぼくはぼくなりに、みんなのためになることをしたつもりだ!」 「みんなのためにっていうけど、結局みんなに迷惑かけてるのよ! もうあなたは戦わなくていい!」  二人は喧嘩をしたっきり、気まずくなった。  日が沈んだ後、キキは外へ出て、一人物思いにふけていた。 「どうした? 元気がないぞ」  声をかけてくれたのは、心優しいドワーフのおじさんだった。  彼は普段、武器職人として、より強い武器を作れないか研究している。 「実は、色々あって」  キキはドワーフに、事情を話した。 「魔法が使えない? 魔法がないなら殴ればいい! 枝がなくても、俺の作った斧がある! これを使え!」  事情を聞いたドワーフは、お手製の斧をキキに渡した。  ドワーフがいなくなり、キキは、かっとなって言ってしまったことを後悔した。 「枝で接近攻撃ができても、素手で魔法が使えなきゃどうせダメなんだ。魔法が使えるように、もっと頑張らなきゃ……」  キキはドワーフがくれた斧を置いて、地面に落ちていた別の枝を拾った。  今度は接近攻撃ではなく、魔法の特訓に取り組むが、当然魔法が使えるようにならなかった。それでも諦めずに一人特訓を続けるキキを見て、ククは苛立って言った。 「キキは戦わなくていいって!」  夜になっても、キキは特訓を続けた。  同じ頃、ククは数少ない同性で仲の良いココから話を振られた。 「人は恋をするとね、神様のいうことを聞くのが面倒くさくなるの」 「それって、どういうことよ?」 「今から話すことは、誰にも言わないで」  そう前置きをして、ココは話をはじめた。 「私には、片想いしている男性がいる。ここからは、恋人とするわね。彼は争いや殺人を好まない人だった。私は、そんな彼の優しいところに惹かれたの。 でもある時、彼は無理矢理、戦争に行かされた。そして私の両親は、恋人と愛し合うことを認めず、別の男性との結婚を強制した。というのも、私の一族と恋人の一族はお互いに仲が良くなかった。それなのに、敵同士で結婚なんてしたら、神の決めたルールを破ることになるからね」  ココは苦笑いしていたが、その目は悲しげだった。 「あなたにも、いつか恋をする時が来る。相手はもしかしたら、信じられないような人かも知れないけれど」  話を終えると、ココは自分の寝床へ戻っていった。 「敵同士で結婚? ありえない!」  話を信じられないククは聞こえないように小声で、馬鹿にして罵った。  みなが寝静まった後も、キキは徹夜でただ一人、魔法の特訓を続けていた。 「魔法が使えなきゃ、ダメなんだ」
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