奥州安部一族の正体

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第4章 祖父の戸籍  太郎さんの本籍は両親の本籍と同じ場所においていました。本籍が同じだと、同じ市区町村の管轄になります。両親も祖父母の本籍と同じ場所にあったので、一気に自分の戸籍、両親の戸籍、そして祖父母の戸籍まで取得することが出来ました。 太郎さんの祖父母は太郎さんが生まれた時には既に他界していたので、太郎さんは祖父母のことは殆ど知りませんでした。祖父母がいつ、どこで生まれて、いつ結婚して、いつ、どこで他界したのか、正確なことは何も知らなかったのです。 しかし今回手に入れた戸籍から、祖父の生年月日、祖母と結婚した年月日、祖父の死亡年月日、死亡した場所などを知ることができました。また、祖母に関しても生年月日、死亡年月日、死亡した場所のみならず、祖母が結婚する前の苗字(旧姓)も知ることができました。 「墓に刻まれた家紋は吉田家の家紋だから、とりあえず祖母のことには触れず、祖父について調べていくことにしよう」  太郎さんはそう思い、戸籍に記載された祖父の情報に注目しました。 「祖父は明治10年(西暦1877年)生まれだ。その年は確か西南の役があった年だよな」 太郎さんの祖父は思っていた以上に昔に生まれた人でした。その父である曾祖父は当然江戸時代生まれだろうと予想できました。 「あれ?」  しかし、そこで太郎さんは今まで見たことがない用語を戸籍に見つけました。それは「転籍」というものでした。転籍とは本籍を他の場所に移すことを指します。太郎さんがその記載の辺りを注意して見ると、そこには福島県田村郡常葉町から転籍したことが書かれていました。 「祖父は元々福島県の人だったんだ」 太郎さんはこの時初めて自分の先祖が福島県に住んでいたことを知ったのです。これ以上戸籍を遡るには福島県の役所で戸籍を手に入れなければなりません。わざわざ戸籍だけを取りに行くには福島は少し遠いかなと思いました。 そこで他に手段がないだろうかと戸籍担当の職員に聞いてみました。すると戸籍は郵送でも請求できるので、わざわざ福島まで行かなくても済むことを知りました。福島にはどれだけ古い戸籍があるのかわからなかったので、遡れるだけ遡ってくださいと書いて請求することにしました。 それから待つこと一週間、遂に太郎さんの自宅の郵便受けにパンパンに膨らんだ福島の市役所からの返信封筒が投函されました。
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