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「チュム……、おかあさんにもシチューをまた作ってほしいなぁ」
退院した母はチュムの頭を動かしにくくなった手で優しく撫でながら言う。
チュムは気持ちよさそうに目を瞑り、母の膝の上へ乗って横たわる。
「チュムのシチューは奇跡のシチューだよね。そんなことあるはずないって普通は思うけど、本当にあったことなんだもん。チュムはちゃんとわたしと喋ったし、シチューも作ったんだよ」
「そうね、全部本当のことだと思うわ。全部チュムのおかげさまね、ありがとう、チュム」
ちょうど今日みたいな寒い雪の日に、チュムは雪みたいに白いシチューを作ってくれた。
家族を救うシチューを。
そう言えば、チュムは黒と白のハチワレ。
雪雲の色と雪の色によく似ている。
チュムはあれから話すことも料理をすることもないけど、相変わらずジィッといろんなものをみつめている。
雪がこうしてちらちらと降る寒い日には、チュムのシチューが食卓にあるのではないかといつも期待する。
「雪の日には何か特別な力が使えるのかな? ねぇ、チュム?」
チュムは、撫でるわたしをジィッとみつめて、
口元をもこもことさせてほんの少し笑った。
雪の日には何か素敵なものもきっと降り積もる……。
[ 了 ]
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