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私の名前は、アリス。
今年15歳になる琴線修理人見習いだ。
え?琴線修理人自体が何かって?
それは所謂、若くして死んだ魂のみが着く事が許されるお仕事で、【生きて大人になる事が出来ずに学べなかった分、琴線修理人として人間の感情をよく理解・勉強し、次に生まれ変われる時に活かせる様にする】――それが、この仕事の持つ意味なのである。
つまりは、次に転生する為の死者専用の職業という訳だ。
え、私?
それは勿論、こうしてあなた達と話している私も死者である。
ちなみに、死因は病死。
私は15年前、どこかの病院で入院中、病気が悪化して死亡したらしい。
詳しい病気の名前や、何処に入院して……どんな家族がいたのか、等は何も知らない。
と、いうより……琴線修理人見習いになった際、生前の記憶は消されてしまうのだ。
先生曰く、
“生前の感情を持っていると、若くして死んだ魂は深い後悔や悲しみを抱え過ぎている事があり、それが理由で、修理に赴いた際に修理対象者に共感しすぎて修理に失敗してしまう事がある”
らしい。
そうなってしまうと――修理対象者の心は、最悪壊れてしまう可能性がある。
それに、修理人の方もまた、悲しみに押し潰されて魂が崩壊してしまう危険性だってあるのだ。
だからこそ、この琴線修理人という職業は、危険と隣り合わせな職業なのだが――。
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