心の琴線修理人

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では、実際、琴線の修理とは一体どんなことをするのか。 それはそのまま――文字通り、人間の心の奥底にある琴線を修理するのだ。 例えば……。 人間は、時にとても些細な事で悲しんだり、怒ったり――衝撃を受けたりする。 その際、心に受けた衝撃があまりに大きすぎると、琴線が切れかけてしまう等――琴線に大きな影響と異常が出てしまうのだ。 琴線に異常が出てしまうと、人間は共感力が弱くなったり……最悪、何にも心を動かすことが出来ない、無感動な人間になってしまう。 そうなってしまう前に駆け付け、それを防ぐのが私達――琴線修理人なのだ。 そうして、今日もまた1件の依頼が入る。 日本は東京にいる、監視人(琴線に異変が起きている者がいないかを日々見守る、修理人のパートナーみたいなものだ)からの依頼の様だ。 何でも、 “琴線の音が聞こえない(と思える程弱くなってる)人間がいる” らしい。 (それが事実なら、その人の琴線にはかなり異常が起きてるって事だよね) 私は、修理人の七つ道具の一つ――空を素早く駆ける事が出来る、羽の生えたブーツを履いた。 そして、人間に見られない様、『透明キャンディ』のイチゴ味を口に含むと、オレンジ色に変わりかけた夕暮れの空を駆け抜けていく。
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