プロローグ

1/1
前へ
/46ページ
次へ

プロローグ

 ポタポタと水が滴っていた。  荒く吐く息が白くなっていたが、それに気付かぬまま無我夢中で進んだ。意識のない人間を、それも男性を、引き摺って歩くのはついこの前まで中学生だった彼女にとって、象を引くこと程大変なことだった。  象を引くことなんて、今までもこれから先もないだろうが。  ぽつりぽつりと距離を空け、無感情に外灯が彼女と彼を照らし、影を作る。  乾いた地面に少しの水跡を残して。  その日、彼女は死のうと思っていた。  しかし、何の因果か。  死体に似たものをを持ち帰ることになってしまうとは。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加