花に雨、君にジャージ

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「え、じゃあ朔良ちゃんもきてよ!」  そして何故か伊東さんからも名前で呼ばれるようになっていた。  その言葉に動きを止める。 「行かないです……」 「でた、敬語」 「何か用事あるの?」  あるわけがない。 「俺と朔良は帰りまーす、ばいばい」 「俺も帰って良いか?」  日南くんは一連の流れに漸く顔を上げた。伊東さんが頬を膨らませて地団駄を踏む。 「何なの皆して!」 「ヒトカラも楽しいと思う」 「ひどい。前から約束してたのに」  その言葉に、西条くんの方を見た。本人は飄々としており、少しだけ伊東さんに憐憫の気持ちが湧く。 「やっぱりわたし、行こうかな……」  カラオケなんて行ったことはないけれど。  そう言うと、伊東さんは目を丸くし、西条くんはぽかんと口を開いた。 「まーじで?」 「ほら、大翔が行かないなら朔良ちゃんと行くから」 「まーじゃあ。よーすけも行くだろ」 「え」  一人本当に帰る気でいた日南くんは状況が変わったことに気付き、わたしを見た。 「じゃ、行こっかな」  てっきりこの四人で行くものだと思っていたけれど、カラオケへ行くと四人では大きめの部屋に通され、しかも先客がいた。  え、誰。  違う制服の男女が伊東さんたちを見て「おつかれー! え、大翔たち来たの?」ときゃっきゃと話している。  知り合いらしい。  来なければ良かった、と数十分前の自分の行動を止めてあげたい。わたしは人生でそんなことばかりだ。
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