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知り合いの一人もいない状況に肩身の狭い思いをしながら、入口付近のソファーへ座った。
「莉緒の友達?」
近くにいた女子がわたしの顔を覗く。わたしより先に伊東さんが返答した。
「クラスメート、北河さん」
あからさまに距離を取られて、心臓が止まりそうになる。
先程まで朔良ちゃんと呼んでいたのは、そう演出することで事が運びやすかったからだ。もうその必要は無くなったから。
「へー、キタガワさん」
伊東さんの温度の低い返答に、その友人女子の興味も薄れたようで、わたしの名前なんて三歩行けば忘れられてしまいそうだ。
心臓が嫌な音を立てる。いっそのこと、止まれば良いとさえ思う。
「北河朔良。俺の前の席」
瞬間、がっと首に腕を回して引き寄せられた。その強い力に驚き、されるがままになる。
「よろしくー」
手首を握られ、ぶらんぶらんと振られた手を見た。その女子は可笑しそうに笑い、「操り人形じゃないんだから」と西条くんの肩を叩いた。
その後、西条くんは奥の席の男子に呼ばれてそちらへ入って行った。その後ろ姿を見て思う。
来なきゃ良かった。
ぐるぐると頭の中で後悔がまわっている。
きっと西条くんが来るのを期待されていて、わたしは当たり前に歓迎されていない。
「これみんな、中学同じだった面子なんだ。知らない奴ばっかりでびっくりでしょ?」
鞄を持ち直したわたしの横に、日南くんが腰を下ろした。
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