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まさか解説が入るとは思わず、そちらを向く。
「ちなみに大翔は途中まで同じ中学だったんだけど、転校して離れた。だからこんなに仲良い」
日南くんは西条くんと話している男女の姿を指で丸く囲う。
そういうことか、と漸く腑に落ちた。
「……帰っても良い?」
小さく尋ねてみる。
日南くんがどちら側の人間なのか分からないけれど、解説をするくらいならわたしの味方になってくれるかもしれない。
きょとんとした顔から口を開いたけれど、その前に声が飛んできた。
「朔良、こっち座れば」
西条くんの声に、わたしと日南くんの視線が向く。それだけじゃなくて、カラオケの室内にいる皆の視線が向いたように思った。
鶴の一声だ。
「朔良ちゃん、こっちおいでよ」
「飲み物、何飲むー?」
「日南は自分で頼んで」
女子の言葉に日南くんは「俺にだけ冷たい」と泣き真似をしている。わたしに向いた視線を受け止め切れず、日南くんの影に隠れる。
「いや、わたしはここで……」
奥の席に入ったら出にくくなる。
「えーこっち来て話そうよー」
ね、と知らない女子に連れられて奥の席へ通された。助けて、と日南くんに視線を投げるけれど、ひらひらと手を振られて見捨てられた。ひどい。
西条くんの隣に座り、頼んだ烏龍茶がテーブルに置かれる。
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