花に雨、君にジャージ

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 数名が歌ったり、あとは雑談している。わたしは話すことも聞くこともないので、黙って烏龍茶を飲んでいた。  隣の西条くんは横の女子や近くの男子たちと話している。伊東さんもそれに混じったりして、日南くんも同様に。  トイレ行くふりをして帰ろう。  とりあえずお金を置いて。  下におろしたバッグから財布を出そうとしていると、一人の女子が尋ねた。 「そういえば大翔、ずっと入院してたんでしょ?」  その言葉に、隣でジンジャーエールを飲んでいた西条くんが目を瞬かせる。 「ん」  それだけ答えて、ストローから唇を離す。 「喧嘩で?」 「あーいや」  あの、死にかけて、入院したと言っていたことだ。  心を入れ替えたという出来事。  わたしは好奇心からその会話を聞いた。 「リンチされてどっかの学校のプールに投げ込まれて、起きたら病室のベッドにいた。怪我より肺炎が酷くて」 「え、治って良かったね」 「本当それな。誰かが、プールから引き上げて、俺をどっかに運んでくれたんだ」  その横顔を見る。  いや、まさか。 「通りかかった人ってこと?」  学校のプールは普通、外からは見られなくなっている。通りかかった人間が例えプールに浮いていても見かけることは無いだろう。 「さあ? ただプールに浮いたままだったら俺は確実に凍死してたから、恩人だ」  ぱっと西条くんがこちらを見た。  数秒目が合い、逸らすことが出来なかった。
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