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「男かよ」
と一言呟いて水を飲む。
男だと何か悪いのか、そもそも籠井先輩を知っているのか。疑問はいくつか浮かんだけれど、先に西条くんが口を開いた。
「バレーも三回戦までいったって聞いた」
「うん、負けちゃったけど。小田原さんが沢山点入れてた」
「朔良は?」
「わたしはサーブ取ってたくらい」
「すげーじゃん」
歯を見せて笑う。その顔を見て考える。
喧嘩していたとは、思えない。
あの冷たいプールに、投げ出されていたなんて。
ただ記憶の不一致を確かめたいだけだった。
「西条くんって」
「ん」
わたしはまだ残っている西条くんのミネラルウォーターの水面を見つめる。
「金髪だったこと、ある?」
しん、と一瞬だけ時が止まった、気がした。
「あるけど、なんで知ってんの?」
凄まれてるわけじゃないけれど、空気が変わる。少しも逃げられないみたいな。
未だ開けていないお茶を握りしめる。
良い言い訳が思いつかず、咄嗟に口からでまかせが出る。
「日南くんが、前言ってたの聞いて」
ごめん日南くん、と頭の中で謝りながら。
「あー……ああ、なるほど。陽介か」
一人頷いて西条くんは立ち上がった。それに準じるようにわたしも頷き、事なきを得た。
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