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席へ戻る日南くんを見送り、わたしは前を向こうとする。
肩を掴まれ、元の位置へ戻された。
「これこの前使ったプリント?」
「え、うん、そう」
「穴埋め見せて」
授業が始まるにはあと五分あった。わたしはプリントを出して渡す。
「恩にきる。今度なんか奢る」
「いや、別に。……死にかけて、一週間休んでたの?」
「そ。この前まで入院してた」
どこか悪くしていたのだろうか。入院するような持病があったり。
人は見かけによらないな、とわたしは心のどこかで思った。
そして昨日の、腕の内側にあった傷を思い出す。
「朔良」
名前を呼ばれ、そちらを見た。人懐こい笑顔を浮かべている。
「ありがと」
プリントが返ってくる。西条くんに友人が多い理由がわかる気がした。
西条大翔が登校してきたことによって、わたしの学校生活は少しだけ変化した。
まず、話す相手が出来た。
「見て。この前バスケしてたときに、水たまりにずっこけた陽介」
「わあ……」
後ろから肩を叩かれ、スマホの写真を見せられる。緑のTシャツを黒く濡らす日南くんの姿があった。
「そんで同じ水たまりにずっこけた俺」
スワイプすると、同じポーズをしてスマホに写る西条くんの姿。黒いTシャツとジャージの下が黒く濡れている。
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