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思わず笑ってしまい、表情を固めると、西条くんが息を吐いた。
「もっと笑ってくれ。じゃないと見せた甲斐がねえじゃん」
「すみません」
「いや謝らんでも」
「同じ水たまりだから、同じとこ濡れたのかな」
「え」
わたしの言葉に、西条くんが何度か二つの写真を見比べる。
「本当だ」
と、自分が一番ケラケラ笑っていた。
もう一つは、女子から話しかけられるようになった。
多いのは、西条くんとよく話している伊東莉緒という女子から。
「北河さんって同じ中学の子いる?」
課題として出されたプリントを解いていると、後ろから急に尋ねられた。
目が合った女子は、目が大きくて丸くて可愛い。私よりも低い背も、細い手足も、整った眉毛やキラキラした瞼も、どこを切り取っても女子だった。
何故、中学のことを聞くのだろう。
そう考えたのが顔に出たのか、感じ取ったのか。伊東さんは柔らかそうな手のひらをこちらに向けてひらひらと振った。
「誰も北河さんと同じ中学だったって聞かないからさあ。どこから通ってるのかなって」
深い意味は無いんだけどー、と付け加えられる。椅子に座る西条くんは背もたれに背中をつけて、同じようにこちらを見ていた。
「蔵島でした」
それから視線を逸らして答える。
「え、なんで敬語?」
「嫌われてるからだろ」
「えー! 何もしてないじゃん!」
伊東さんが西条くんを見て唇を尖らせた。わたしが前へ向き直ろうとすると、呼び止められる。
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