side:雨風 篠突く雨

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『お休みしていると聞いて、心配しています。電話をしてもいいですか?』  ――こんなん、泣くだろ。  あっという間に両目がぐずぐずになった。いい大人がダサすぎるが、人間社会から断絶され無力感と孤独感に苛まれていた俺には、彼女からのメッセージは赦しであり救いであった。  すぐにメールを返そうと試みる。  ――やべえ。  丸四日間人間らしい生活を放棄していた俺は、気の利いたメッセージの返し方をいうものを、まるっきり忘れてしまっていた。  もうちょっとメンタルを整えてから返すか? いや、でもメール受信は昨日の昼になっている。これ以上返信が遅くなるのも……。  ベッドの上で深呼吸をひとつし、思い切って通話ボタンを押した。
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