side:雨風 晴れ、時々甘々

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 そのあとは、パーキングエリアに寄り、フードコートで昼食をとる。何の変哲もないパーキングエリア。  しかし、この地は―― 「この角度……間違いないわ」 「ああ。ブログの写真と一致してる。  PVロケ旅行の時、座ったのはこの席だな」  ――そう、ここは知る人ぞ知る、レペトワの聖地なのである。 「そして、オーダーしていたのは確か」  ゆきさんが頷いた。 「カレーコロッケ丼」  レペトワ聖地巡りを一通り堪能した頃、空に茜色が射し始めた。今日が終わればまた、しばしの別れ。  寂しさを紛らわすように「……帰りたくないな」と甘えれば、「ちょっと寄り道しようか」とゆきさん。  海岸線、すでに閉まった土産屋の駐車場に車を入れると、無防備な彼女の頬にキスを落とした。 「……もう、急に」  頬を染めたゆきさんから、非難の目を向けられる。 「許可制にしたほうが?」  にっと笑ってみれば、ついと目を逸らされた。 「またそういう屁理屈を」 「明日からまた頑張るために、ご褒美ちょうだい?」  彼女には、つい甘えてしまう。 「……もう」  困った顔をしながらも、受け止めてくれるからだ。  彼女が、たどたどしい手つきで俺の頬に触れ、唇にそっと口づけてきた。触れるだけのキス。離れていく彼女を、摑まえる。 「ゆきさん、もうちょっと――」  遠くから聞こえる波音に、交わって消えるリップ音。  溺れてしまうくらいに、幾度も唇を重ねる。  きみが好きだと、何度でも伝えるように。 「あのさ、ゆきさん」  蕩けた瞳が向けられる。  この頃、密かに考えていたことを、そっと口にする。 「よかったら、一緒に住まない?」 「……え?」  ゆきさんが、大きく目を見開いた。 「そしたら、今みたいに月一でしか会えんこともなくなるし、寂しくないじゃん」  ――主に俺が。
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