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「わぁ〜」
…とある土曜日の湖畔。
藤次の漕ぐボートに乗り、絢音は眼前に広がる新緑と青空にため息を溢す。
「晴れてよかったなぁ〜。ちょい遠かったけど、車飛ばして来た甲斐あったわ。」
「…ごめんなさい。折角のお休みなのに、私なんかが行きたいって言ったばかりに…こんな遠く…」
「かまへんかまへん。ワシは、お前の欲しいや行きたいが、たまらなく嬉しんや。せやからそないな顔せんと、笑ってや?…ほら!水鳥もおるで?!」
そう言って、湖に佇む鳥の近くへボートを近づけたら、鳥が大きく羽ばたき、水飛沫が絢音にかかる。
「うわっ!!ごめん!!ワシ…」
「ううん大丈夫。ハンカチあるから…」
そうしてハンドバッグに手を伸ばした瞬間だった。
濡れて…下着の透けたブラウス姿の絢音が視界に入り、思わず藤次はごくりと息を呑む。
「(ベージュ…まあ、それはそれで、古風というか…)」
そうすると以前、初めて自分の家に泊まった時は白だったなと思い出して、俄に秘所が熱を持ち、股間を握りしめる。
「(あかん!勃つな!今勃ったら、完全に幻滅される!!)」
そうしてなんとか興奮を抑えた時だった。
別のボートが、ガンとぶつかってきたので、船が傾き、絢音が湖に投げ出されそうになる。
「きゃあ!」
「絢音!!」
そうして身体を支えるように抱きしめた時だった。
藤次の大きな手が、絢音の胸を鷲掴みにしたのは。
「あ……」
すいませーんと言う謝罪の言葉も耳に入らないのか、呆然と身を固くしていたが、直様藤次が我にかえり彼女から離れる。
「ご、ごめん!!ワシ、べつに疾しい気持ちで触ったわけやなくて!」
「わ、分かって…る。助けてくれようとしたんでしょ?分かってる。」
「せ、せやけど…い、嫌なんやろ?男に、そう言うとこ触られるの…せやから…」
そう言ったら、絢音は顔を赤らめ俯く。
「た、確かに嫌だけど…でも、不思議。藤次さんは、全然嫌って気持ち…ない…寧ろ…もっと…って…」
「…っ!!」
忽ち真っ赤になる2人。やや待って、藤次が徐に口を開く。
「ほんなら、行きしにあった…そう言うことするホテル…行くか?」
「えっ!!」
耳まで真っ赤になった絢音を抱き寄せ、藤次は囁く。
「もしかしたら、できるかもしれんやろ?…せやからなあ、行こ?」
「だ、ダメ…アタシ、今日下着姿…見せられない。」
「なんで?別に気にせんで?そんなん。…どうせ脱ぐんやし…」
「あ…」
スイッと、耳の髪を浚いそこに口づけ舐めると、甘い声が聞こえてくるので、顔を見て深く口づけ胸を弄る。
「藤次さん…」
「絢音…」
見つめ合い、これなら行けるかと胸を高鳴らせていたら、絢音がすまなさそうに頭を下げる。
「ごめんなさい…やっぱりアタシ、勇気が出ないの。下着もだけど、するのも20年以上ぶりだし、ちゃんとできるか、不安で…」
「そ、そんなん!俺がちゃんとリードする!痛い思いも嫌がることもせん!!せやから…」
そうして食い下がってみたら、絢音は恥ずかしそうに俯く。
「なら尚更、するなら今日の下着じゃなくて藤次さん好みの、可愛い下着で、もっとロマンチックにしたい。藤次さん…好きな人との初めてだもん。大切にしたい。ダメ?」
そうして上目遣いで見られると、嫌とは言えず、藤次はうんとしか言えなくて…結局、絢音を駅に下ろして帰宅の途に着く。
「おかえり。土曜デートなのに早いじゃん。まだ21時だよ?」
出迎えた真嗣の言葉に、藤次は口をへの字に曲げる。
「別にええやんか。ここはワシの家や。いつ何時に帰ろうが、勝手やろ。」
「そりゃそうだけど…ご飯は?」
「いらん。食って来た。風呂。」
そう言って風呂場に行って、白んだ天井を眺めながら湯船に浸かっていると、不意に右手を見やる。
「Aくらいか思うとったけど、意外にあったな。胸…」
初めて触れた彼女の女の部分の感触の余韻に浸っていると、秘所がまた熱くなり、藤次はため息をつく。
「溜まりに溜まってるもんな。とりあえず、一発抜いて落ち着かせるか。早よ、ヤレるように、なりたいのぅ〜」
愚痴りながら、湯船から上がり、今日の絢音の艶っぽい姿を思い浮かべて自慰に耽る。
「(なら尚更、するなら今日の下着じゃなくて藤次さん好みの、可愛い下着で、もっとロマンチックにしたい。藤次さん…好きな人との初めてだもん。大切にしたい。ダメ?)」
「…………」
純真可憐な絢音の言葉が脳によぎった瞬間、欲求は萎み、藤次は顔を真っ赤にして俯く。
「あんな顔で言われたら、大事にしたいて、思うてまうやん。…ホンマ、ずるいわ。」
言って、身体を流して風呂場を後にし、彼女に対する黒い欲求を飲み下すかのように、冷蔵庫の冷えた缶ビールを盛大に呷った。
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