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大場和幸
喫茶シエスタ
駅前の賑やかな通りから路地をいくつか曲がった先にある、古い小さな喫茶店。それが喫茶シエスタ。
昔、喫茶店だった昭和の香りが残る建物を、今のオーナーがリノベーションをして2年前にオープン。
大々的な宣伝はしなかったので、お客は近くの住民がほとんどで、たまに仕事途中のスーツ姿を見る程度のアットホーム的な喫茶店だった。
オーナーの大場和幸は、そろそろ五十の声を聞くような年で、その見た目は年相応。笑顔が絶えることのない男性だ。
忙しい時間帯に来ているアルバイトは近くの大学に通う青年で、大学のテニスサークルに入っているらしい。先輩から、「テニスをやっていれば女にもてる」とか言われて入部したとか。
年配の常連客はそのアルバイトを孫のように可愛がっている。確かに可愛がりたくなるような、そんな愛嬌のある子だ。
有若雫月はオープン当初からこの店に通っている常連だ。
引っ越ししたばかりの頃、駅からマンションまでの帰り道に考え事をしていて曲がる道を間違えて迷った時に、リノベーション工事中の店を眺めるオーナーと知り合った。
オーナーから、「オープンしたら来てね」と言われ、スケジュールにはオープン日を登録。それから約2ヶ月後にお花を持って店へ行き、それからこの店の常連となった。
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