番外編①

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番外編①

――――それは壹夜ちゃんがうちにきて暫く経った頃。 「……え、お前らまだなの?」 「まだって……その……っ」 八雲に問われ、夜霧さんが狼狽えていた。 何の話だろうか……? 「一辺ガツンと行って来いよ」 「いや、ですけど……ぼくには特殊な力があるので」 言霊の力だったっけ。 「那砂さんには使いたくないですが、思ってもみない拍子に出てしまえば、彼女の意思とは関係ない結果になってしまうかもしれません!」 那砂さんが関係してるのかな。 「お姉ちゃん鈍すぎ」 玻璃(はり)と遊んでくれていた壹夜ちゃんから声がかかる。え……鈍い……? 「あいつぁ俺の眷属選んでんだぞ?聞きゃしねぇよ」 「え……っ」 「言ってなかったか……?那砂は俺に生涯仕える選択をしてんだ。その代わり、女鬼としての幸せはさ……捨ててんだよ」 そっか……八雲と同じ寿命を生きるから。普通に夫婦はできないということ。 「でも、たったひとつ女鬼としての幸せがかなう方法があるとする」 「……それはっ」 「お前も選ぶか?俺の眷属を」 「選ばなければ、那砂さんと壱花(いちか)さまが大変なことになるでしょう?」 確かに……主役の宴会ではすぐに帰ろうとしちゃうし、玻璃(はり)のことをお願いしている間は、夜霧さんについてきてもらっているのだ。 那砂さんとお買い物に行く時は、代わりに夜霧さんと八雲がみてくれるけど。 それでも夜霧さんの忠告は……ありがたい。 「なら、もうひとつついでに選んで来い」 「……っ、その……っ、それは」 もうひとつとは……?夜霧さんがかなりテンパってる? 「ねぇ、私の名前が聞こえた気がするんだけど、呼んだ?」 「わ――――――っ!?」 いつの間にか、夜霧さんの隣に那砂さんがいたのだ! 「そんなにびっくりしちゃった?ふふっ」 そしてにこやかに苦笑する那砂さん。 「そ、その、那砂さん……っ」 そして夜霧さんが意を決したように切り出す。 「ん?」 「その……ぼくも、八雲さまの……眷属にしてもらおうと思って……」 「あら、そうなの?それは助かるわ!一緒にがんばりましょうね」 「は……はい!」 にこりと笑みを浮かべる夜霧さんだけど……。 「夜霧、それだけじゃないでしょ」 壹夜ちゃんから鋭い指摘が入る。 「あら、何かしら?」 「えと……そのー……」 「おら、行け。こう言う時は気合いだぞー」 八雲がにやにやしている。 「簡単に言わないでくださいよ!」 「八雲ったら、また何か悪戯企んでるんじゃないでしょうね」 那砂さんの視線に、八雲がサッと視線を外す。 「ち、違うんです、那砂さん!」 夜霧さんが那砂さんの手を握り、見つめる。 「……えっと……」 「その……夫婦に……なってくれませんか……っ」 ……え!?え――――――――っ!? 「本当に気付いてなかったんだな」 八雲!? 「お姉ちゃん相手に八雲さまも相当攻めたね」 「当然だろう?」 八雲が何だかドヤ顔を見せているが……。 夜霧さんと那砂さんは……! 「ん……うんっ」 那砂さんが……顔を赤くして、照れてる!? 「し、幸せに……しますから」 「うん……っ」 見つめ合うふたりが結ばれたことに心の中で拍手を贈った。
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