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「川瀬、大丈夫?」
猿轡だけでもと薄汚れた手拭いを
口から外してやると、
川瀬はありがとうと呟いた。
「僕たちは誘拐されたんだよ、岸野」
「やっぱりそうだよね‥‥」
どちらからともなく身を寄せ合って
不安と戦う。
「あの、僕んちにはお金はないです。
離婚した母と僕の2人暮らしで、
あなたが満足できるような額は
支払えないですよ」
川瀬も言葉を続けた。
「うちも家のローンがあります。父さんも
母さんも支払えないと思います」
相手はオトナとはいえ、たった1人だ。
正直に話せば解放してくれるかもと
思ったのだ。
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