Daydream〜不可抗力の耽溺〜

5/19
前へ
/19ページ
次へ
「ちゃんと言うことを聞いたら、 岸野には危害を加えない。 そういうことでいいですよね」 「川瀬?!」 「言うことを聞いてくれるんだね。 じゃあキミの手枷は切ってあげる。 ところで、キミは精通してるの」 「はい。してます」 「川瀬、精通って何」 自分の知らない言葉を使って男と話す 川瀬の腕にしがみついた。 「岸野。大丈夫、頑張るから」 「意味がわからない、何を頑張るの」 やがて車は山を越え、見知らぬ街に出た。 そこで車は一旦停まり、 男は目隠しをするようにと 使い古しのネクタイを2本手渡してきた。 「川瀬」 「岸野、後ろ向いて。目隠しするから」 「いい子だ。終わったら発車するよ。 逃げるなんて考えたらダメだからね。 1人殺すのも2人殺すのも一緒なんだよ」 「おじさん、人を殺したことがあるの」 そう尋ねる川瀬の声が儚く聞こえた。 目隠しで視界を遮断された状態で 僕は声がする方にカラダを向け、 男の返事を待った。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加