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「ちゃんと言うことを聞いたら、
岸野には危害を加えない。
そういうことでいいですよね」
「川瀬?!」
「言うことを聞いてくれるんだね。
じゃあキミの手枷は切ってあげる。
ところで、キミは精通してるの」
「はい。してます」
「川瀬、精通って何」
自分の知らない言葉を使って男と話す
川瀬の腕にしがみついた。
「岸野。大丈夫、頑張るから」
「意味がわからない、何を頑張るの」
やがて車は山を越え、見知らぬ街に出た。
そこで車は一旦停まり、
男は目隠しをするようにと
使い古しのネクタイを2本手渡してきた。
「川瀬」
「岸野、後ろ向いて。目隠しするから」
「いい子だ。終わったら発車するよ。
逃げるなんて考えたらダメだからね。
1人殺すのも2人殺すのも一緒なんだよ」
「おじさん、人を殺したことがあるの」
そう尋ねる川瀬の声が儚く聞こえた。
目隠しで視界を遮断された状態で
僕は声がする方にカラダを向け、
男の返事を待った。
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