レベル15 マックスイン

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レベル15 マックスイン

 俺は思う。このまま審議で不適合とされれば、俺は、もう復活しなくて済むと。  遺影ッ!  だわよ。  無論、モブキングへの道は絶たれるが、それでも死の瞬間という、どこまでいっても慣れない不快感を感じずに済む。いや、多分だが、普通に死ぬのならば不快感どころか快感を感じるのだろう。そう聞いた事がある。だが、俺の場合……、  死の瞬間には普通に不快感しか感じない。  それは、もう足の裏を這うムカデ君だぜ?  済まん。  兎に角。  だからこそ審議で心技体を兼ね備えた本物の勇者を復活させてくれと強く願う。  いまだ、さね魔人とムキムキ言語の審議は続いている。ともかく俺がビチという謎の生命体ではないと結論づけてくれ。頼む。本当に頼む。などと考えていた。ほんの数分前まで。今は……、いや、これを先に言っておこう。大事な事だ。  俺は正義感が強い方ではない。むしろ小悪党でズルい人間。それは間違いない。  それでも見ないフリを出来ない事もある。  消費税が実は一ヶ月分合計すると高額になってる事よりもな。  ジョン。  まあ、そんなこんなで毒針を用意したのだが、今から、ここからが勝負の時だ。  ふんふんふん、と桜木花道よろしく毒針で素振りを開始する。  無論、デフェンスではなくアクティブな攻撃としてのソレだ。  何故ならば、影分身ならば、うずまきナルトの方が得意だからな。いや、今は影分身の話じゃない。いや、むしろバルタン星人の方が得意か。それとも、オレの体は今日の為にある事を……、V3、あんたが教えてくれた!! の方なのか?  俺の得意分野じゃない特撮〔リアル表現〕での分身だからな。  裏を返せば凄いクオリティなんだろうな。  遺影ッ!  うむっ。  この際、どこから毒針を調達したのかという疑問はスルーだ。  そういう話だからな。この勇者は死にましたというブツはな。  遺影ッ! 「ようやく審議の結果が出たよ。モブキングになり損ねたモブ」  遂には、ビチどころか、モブキングでもなく、ただのモブへと成り下がったぞ。  香恋達の中で。クソッタレが。阿呆ども。  さね魔人よ。……そんな薄情で良いのか?  マジで。  そうだな。このままでは俺の話を聞いてくれている最高にハイにさせてくれる人達に不親切な気がする。だから、ちょっとだけ時間を巻き戻し、こうなった経緯〔いきさつ〕を語らせてくれ。毒針を準備して素振りを繰り返した経緯をだな。  ジョン。  審議が長引く中、俺は思ってしまった。考えてしまったのだ。  もし仮にだが、ヤツらの中で俺は不適合という結論が出てしまった場合、ヤツらはヤツらの目的をあきらめるだろうか、とだ。そして、俺は、通算で五回も復活させられた。しつこいほどに死んでは生き返る、生き返っては死ぬを繰り返した。  あれほどまで、しつこいくらいに生き返らせるという事はだ。  さね魔人とムキムキ言語には、なんとしても成し遂げたい何かが在るんだろう。  だったら。だったらよ。俺が不適合とされれば……、また新たな犠牲者を募るんだろう。容易に想像できる。無論、そうしない可能性もあるが、今は、ヤツらにとっての復活の意味とは考えれば、それが一番の合理解だとしか思えんのだ。  例えるならば無事カエルがショッキングピンクなほどまでにありえ~るなのだ。  いや、洗剤はアタック派にも朗報だ。毒針で愛と友情のツープラトンだからな。  遺影ッ!  兎に角。  ヤツらが俺を捨てるとするならば新たな犠牲者にターゲットオンだろうな。ダイワテキサスとサルバトリーチェの子だぞ。ヒダカファーム所属で2024年3月20日の時点で獲得賞金0万円な将来有望なUMAさんだ。いや、何の話だ。  ジョン。  とにかくだ。そうやって俺ではない誰かが、復活して死ぬを繰り返す事になる。  それは間違いないだろう。  そして、  君は、勇者なんだと、のたまい、同時にモブキングに為るのだ、とそそのかす。  もはや火を見るよりも明らかだ。だからこそ先に言ったのだ。俺は正義感が強い方ではないとな。むしろ小悪党でズルい人間だと。もちろんモブキングになるような人間だから、それがデフォ装備なのだが、だるい事もやらねばなるまい。  何故ならば、普通人ならば、憤って自己犠牲な気分に浸る時も確かに在るのだ。  普通だからこそ、ピタゴラスに憧れ、ニコラテスラにおののき、アイザック・アシモフを刺したくなる時もあるのだ。無論、自己犠牲に対する考えは曖昧で、イイネやリポストの数を気にして自分の立ち位置を変えるのもまた普通人だな。  そんな訳〔どんな訳だという意見は黙殺〕で毒針をチャキンと装備したのだよ。  ククク。  管理局の白い悪魔を倒す為。連邦の白い悪魔を倒すべく。C級の白い悪魔をな。  遺影ッ!  つまり。  もし、お前、もういらない、と言われたら、分かった。あきらめるよ、でも、お別れを、直接、言いたいから最期に姿を見せてくれ、と懇願してだな。さね魔人とムキムキ言語〔偽名だったな〕が現われたら……、毒針でブスッと一刺しだぜ。  ロッキー山脈に登ってハチの一刺しだぜ?  遺影ッ!  そして時間は今へと戻る。阿呆どもの言葉を待つ。死ね。そんな気持ちを抑え。 「あんたは、ただのモブって事になったさね。もう良いよ。……安らかに眠りな」  だろうな。めっさダルい事になるのは分かっていたんだよ。クソッタレどもが。  やってやんぜ。初の緋と指し指作戦をな。 「うむっ」  ムキムキ言語の方もあきらめたようだ。いや、奴は、いの一番に飽きていたか。 「もはや制御不可能と決した。モブキングにもなれないモブだともな。勇者は主ではなかったようだ。だからこそのお役御免だ。その方が主も嬉しいであろう?」  ああ、嬉しいさ。死ぬほどな。まあ、死んでるけど、……それ以上に嬉しいさ。  だがな。  新たな犠牲者を出さぬ為、俺がモブキングになる為、俺は正義の燃えさかる炎となる。焔となり、さね魔人とムキムキ言語を見事に仕留め、そして、この世を平和にしてやる。もちろん、マックスむらい、と、ラファエルの屍を越えてゆく。  無論、ヒカルという謎の生命体すらもな。  また詐欺をやるんだろうな。あの詐欺師。  遺影ッ!  ふんふんふん、ぶぉん、と毒針が重くて不穏なる音を立てる。  モブ王は、モブキングは、モブの王。王が無辜の人民を護るのは責務なのだよ。  ジョン。 「じゃ、成仏するがよいぞ。ただのモブよ」  ムキムキ言語、そう言ってられるのも今のうちだぜ。阿呆が。  ふんふんふん、ぶぉん。ぶぉん。ぶぉん。 「そうさね。じゃ、バイバイだよ。サンキュウさね。モブ野郎」  ククク。  さね魔人、お前も、お気楽に、そんな薄情な言葉を吐いているが、思い知れッ!  俺が放つ、廬山昇竜覇な毒針を喰らえッ!  ふんふんふん、ぶぉん。ぶぉん。ぶぉん。  だわよ。  うむっ。  多分だが、ムキムキ言語は、四回目の転生で俺の前に現われた。いや、現われたと思う。あの四回目の魔王がムキムキ言語だったのかと俺が問うた時、ヤツは半分正解で半分不正解だと応えたからこそアレはムキムキ言語だったんだろうな。  そうだ。  一回でも俺の目の前に現われたとするならば二回も三回も変らない。だろうが。  同時に。  さね魔人は、何らかの理由で姿を現さないのかもしれないが、  それでも、ムキムキ言語に毒針を刺してやれば、ヤツらとて俺の覚悟ってヤツが分かるだろう。それこそ文字通りに痛いほどにな。いや、むしろ魂〔この真っ白インでは魂が体を作ってるからな〕に毒針を刺して即死させれば消滅だろうな。  魂ごと。神の裁きを喰らった俺が宇宙塵になったのよりも大変な事になるのだ。  ヤツらは。いや、少なくともムキムキ言語の野郎は。だろう?  ちゃうのか? いや、ちゃわんだろう。茶碗蒸し。頑張って、ちゃぶ台だわよ。  ふっと。  俺は一つ笑ってから言う。 「分かったよ。理解した。だが、最期に頼みがあるんだ。今まで、お前らの思惑に付き合ってきたんだから最期の頼みくらい聞いてくれるんだろう? なあ?」  敢えて分かりやすいよう言葉にしてヤツらに問いかけてみた。  さあ、どうでる? 阿呆。  ジョン。  だわよ。
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