虹色の竜

2.出現

　竜が最初に現れたのは、30年ほど前らしい。父さんが言っていた。ある日、東京の上空に突如虹色に輝く竜が現れたのだ。

　最初は一大ニュースになった。日本だけでなく世界中のマスコミが一斉に竜の出現を報じ、謎の生命体は世間の注目と興奮の的となった。世界中のあらゆる調査機関が竜の調査を行ったが、丸２年経ってもこれといった発見は得られなかった。　　　　

　ワイドショーでも度々謎多き竜として取り上げられていたが、あまりにも調査が進展しないため竜の出現から3年程経った頃には、人々は竜への興味を失いつつあった。そして気づいた頃には東京の上空に浮かぶひとつの風景と化していた。30年の年月を経て人々の興味関心は次第に薄れ、空に浮かぶ雲に近しく東京の空の風景の一部となっていた。

　他国からの新い兵器だとか、宇宙からの未知の生命体だとか、様々な憶測が飛び交った。だがどの説も有力な情報は得られず、その後竜は人々の日常へ溶け込んでいったのだ。

　そして30年の月日が経った今、突如竜が消えた。大学のテストが終わり、今日から年末年始を含む冬休みとなる。