冷血副社長

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「お?阿部くんじゃないか。どうしてこっちに?」 藤田と入れ違うように部屋に入って来た部長に、真里亜は、待ってましたとばかりに駆け寄る。 「部長!おはようございます。あの、やっぱり私、副社長には秘書課の方についてもらった方がいいと思いまして」 すると部長は、何を今更と言いたげに口を開く。 「それが無理だから、今はとりあえず君についてもらってるんだろう?」 「そうですけど。いつまでもこのままというのは…」 「では秘書課に、誰か副社長についてくれそうな人はいるの?10人いる女性秘書が全員、1ヶ月と持たずに音を上げたんだぞ?」 「ですから、それは。別の部署から希望者を募れば…」 「その人が長く務まる保証は?それがないから、まずは君が副社長について、何が問題なのか改善点を見つけることになったんだろう?その君が役目を放り出してどうする」 うっ…と真里亜は言葉に詰まる。 「ほら、分かったら早く副社長室に戻りなさい」 「…はい」 しょんぼりとうなだれる真里亜の肩に、部長が労るようにポンと手を置く。 「頼んだぞ。副社長につくのが他の人でも大丈夫になれば、また人事部に戻っておいで」 「はい、頑張ります」 真里亜は、優しく笑う部長に頷くと、鞄を持って人事部の部屋を出た。
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