冷血副社長

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「副社長についてからそろそろ1ヶ月か。私も部長に愚痴こぼしちゃったし、秘書課の皆さんと同じだわ」 どうしてたった1ヶ月で心変わりするのだろう?と疑問だったが、実際に自分もやってみるとその気持ちがよく分かった。 副社長は、とにかく人当たりが悪い。 いつも仏頂面で、ぶっきらぼうに指示を出す。 朝から晩まで仕事漬けで、一緒にいるとクタクタになるまで働き詰めになる。 (いや、それはまだ良しとしよう。秘書課の皆さんだって、それだけなら耐えられたはず) 何より堪えるのは… 「人を人とも思ってないようなあの態度よー!!」 真里亜は、他に誰も乗っていないのをいいことに、エレベーターの中で思わず叫ぶ。 「いくら女嫌いだからって、あんなにホイホイ名前を間違える?いや、間違えるなんてレベルじゃないわよね。私の名前なんて、きっと覚えてないもの」 藤田に、インパクトのある名前だと言われたのを思い出し、鼻で笑ってしまう。 「ほらね、藤田くん。全然そんなことないんだから」 それに副社長はいつも、 「おい」「ちょっと」「お前」といった具合で呼びかけてくる。 (きっとロボットみたいにしか見られてないんだろうな) それが毎日、しかも一日中続くと、だんだん気力もなくなってくる。 周りには誰もおらず、常に副社長と二人きり。 ふとした瞬間に虚しさが込み上げてくるようになり、思わず今日は人事部に顔を出して愚痴をこぼしてしまった。 「でも頑張らないと!このままだと堂々巡りだもんね。よし!なんとしてもこの状況を打破してみせる」 真里亜は拳を握りしめて頷くと、最上階でエレベーターを降りた。
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