冷血副社長

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「副社長、おはようございます」 まずは丁寧にお辞儀をしてから、住谷は手にしたタブレットを操作する。 「本日のご予定をお伝え致します」 副社長は相変わらずパソコンをいじったままだ。 代わりに真里亜が自分の席で耳をダンボにしながら、同じようにタブレットで副社長の予定を開く。 住谷も身体の向きをやや斜めにして、真里亜にも聞こえるように話し始めた。 「10時から12時までは本社会議室で役員会議。赤坂のホテルに移動して12時半から14時まで、北野テクノロジーの北野社長と会食。その後社に戻り、15時にアース・インターネットワークの副社長がお見えになります。17時からは…」 延々と続く予定は、21時からの海外企業とのオンラインミーティングで一応終了となっている。 だが、そのオンラインミーティングがいつまで続くかは分からない。 (はあ、今日も長丁場になりそう) 真里亜は長い一日を予想して、気が重くなる。 「本日は以上でございます」 「分かった」 ようやく副社長がひと言返した。 「それでは失礼致します」 住谷がお辞儀をして踵を返すと、真里亜は立ち上がりドアを開ける。 「ありがとう」 穏やかな笑みを浮かべて礼を言ってくれる住谷に、真里亜は、ようやく人と出会えた!と妙に嬉しくなった。
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