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一人のサンタが、ソリの椅子に座り、煙草を取り出して、火を点けた。
そして、「準備OKだ。行くぞ!」トナカイの手綱を引き、号令をかけると、
もう一人のサンタが何か気づいたのか、
「おいおい、髭を付け忘れているぞ」と戒めた。
指摘されたサンタは、
「おっといけね」と言って、吸いかけの煙草を地面に捨て、髭を付けた。
その行儀の悪いサンタを見た別のサンタが、「気をつけろよ」と言って、
「煙草を吸ってるところもそうだが、捨てるのを誰かに見られたらどうするんだ!」と戒めた。
けれど・・
「大丈夫だ」
注意された人相の悪いサンタは平然と言って、
「捨てた煙草は、雪がちゃんと覆って隠してくれるさ」と、うそぶいた。
その男の言った通り、
地面に落ちた吸い殻は雪を溶かしたが、すぐにその上を雪が降り積もり、吸殻は見えなくなった。
まるで、全ての罪を隠すように。
雪の降る闇の中、
サンタが乗ったソリのシャンシャンという鈴の音が響き渡った。
その音を聴いた子供たちの顔に笑顔が浮かんだ。
(了)
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