子供たちへのプレゼント

4/4
前へ
/16ページ
次へ
 一人のサンタが、ソリの椅子に座り、煙草を取り出して、火を点けた。  そして、「準備OKだ。行くぞ!」トナカイの手綱を引き、号令をかけると、  もう一人のサンタが何か気づいたのか、 「おいおい、髭を付け忘れているぞ」と戒めた。  指摘されたサンタは、 「おっといけね」と言って、吸いかけの煙草を地面に捨て、髭を付けた。  その行儀の悪いサンタを見た別のサンタが、「気をつけろよ」と言って、 「煙草を吸ってるところもそうだが、捨てるのを誰かに見られたらどうするんだ!」と戒めた。  けれど・・ 「大丈夫だ」  注意された人相の悪いサンタは平然と言って、 「捨てた煙草は、雪がちゃんと覆って隠してくれるさ」と、うそぶいた。  その男の言った通り、  地面に落ちた吸い殻は雪を溶かしたが、すぐにその上を雪が降り積もり、吸殻は見えなくなった。  まるで、全ての罪を隠すように。  雪の降る闇の中、  サンタが乗ったソリのシャンシャンという鈴の音が響き渡った。  その音を聴いた子供たちの顔に笑顔が浮かんだ。                                              (了)
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加