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「ライトさん!なんで連絡してくれなかったのっ!?」
休憩時間、司が真っ先に向かったのは保健室。
勢い良く開けた扉の向こうには、早くも優雅に紅茶を飲むライトの姿があった。
ライトは髪をポニーテールに結った白衣姿。司を見ると青い瞳を楽しげに細めた。
「おや、早速、怪我人かと思いきや…久しぶりですね、司?」
貼り付けられた、天使のような笑顔の裏から、チラチラと腹の黒さが垣間見えた。
「久しぶりですねえ、ではなくて…っ」
司が言いかけた時、スッと伸びた指が唇に添えられる。
その先の言葉を塞がれる。
「こら、保健室では怒鳴ってはいけません。…秘密にしていれば、キミが驚くと思ったんですよ。なので黙っていたんです。」
優雅に微笑まれ、指が離れても司は言葉を詰まらせていた。
元々ライトは親戚で集まった時の一年に一度、会う程度だった。
まさか、これから毎日のように顔を合わせることになるとは、想像も出来ない。
「あとこれからはライト先生って呼ぶこと。良いですか、神崎さん?」
どうやら先生ぶりたいようだ。
いつもは中身が子供っぽいクセに、今はわざとらしく大人っぽい口調で言った。
正月に会った時は『チョコミントは歯みがき粉みたいで嫌いです。』とか言ってたのに。
「…それじゃあライト先生。」
「はい、なんでしょう?」
ライトが司に満面の笑顔で微笑んだ時、無造作に保健室の扉が開いた。
入ってきたのは同じクラスの男子だった。
影沼美織。
一匹狼であり寡黙、物静かな武人のような佇まい。
静かで他者に迷惑をかける事はないが、力がとにかく強い脳筋な為、不良と恐れられている内の一人。
影沼は、保健室にいた司とライトを見て、ぎょっとしたような顔をした。
「…サボろうかと思ったが、いたのか…。
それに神崎、なんであんたまで…。」
心の声をまるで隠さずに、ボソリと言った。
どうしてか、一匹狼の影沼が言葉を交わす内の一人が司だった。
「おやおや、私を相手に堂々とサボろうだなんて、良い度胸をしていますね。
キミの顔、覚えましたよ?」
笑うライトに影沼がジト、とした目線を向けた。
「影沼くん、実はライト先生と私はいとこ同士だから話してたんだ。」
「いとこ…あんたと…?」
影沼が司とライトを見比べた。
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