夜の学校

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夜の学校

 その日、(つかさ)は美術部で作業に没頭していたのもあり、辺りはすっかり暗くなっていた。 すっかり熱中してしまっていたらしい。 学校内は人気がなく薄暗い。  司は最低限の明かりだけの階段をゆっくりと降りていた。 その時、廊下で白いものがゆらりと視界に入った。  「!?」 司がバクバクと跳ねる心臓を押さえつつ、固まる。 白い影はこちらに気がついたように、足を止めていた。  「おや、まだ残っていたんですか? (つかさ)、もう皆帰ってしまいましたよ。」 白衣姿のライトだった。 白衣から覗く白い肌と煌めくプラチナブロンドで、真っ白い幽霊かと思った。  「ライトさん、ちょうどこれから帰り?」  「ええ、戸締りをしていたんです。 そうだ、もう外も暗いし、送っていきますよ。」  「いや、さすがにそこまでは大丈夫だよ。 それに生徒と先生がマズイんじゃないの?」  「いとこ同士でマズイも何もあるとでも? 今時は暗いと何が起こるかわからないでしょう? それで何かあったら、私が(つかさ)の両親に怒られてしまうから。」 ぽす、とライトが司の頭を撫でた。 面倒見が良いというのか。 普段はなかなか面倒な性格をしているのに、こういう時は大人っぽいと思ってしまう。  「…わかった。」 ライトがくすり、と微笑んだ。  「そうだ、あと一ヶ所鍵を閉めないといけない場所があるんです。 はぐれても面倒だし、どうせだからついてきますか?」  「え?」 ライトがニヤリと微笑んだ気がした。    「ライト先生、よりにもよってなんでここを残しておいたの…?」 人気の無い最上階。 五階に存在する空き教室は、生徒達の間で幽霊が出るという噂がある。  びくびくと、司は前を歩くライトにぴったりと張り付いて言う。 前から楽しげなライトの声が聞こえた。  「順番に閉めていったら、ここが最後になっただけですよ。」 辺りは人気がなく、暗い。 夜の生徒がいない学校は、酷く不気味だった。 悠々と歩くライトの足取りは、余裕そのもの。  確かこの人は麗しい外見に反して、ホラーや怖いものには強かったのだと思い出す。 どうしてか、幽霊よりピエロの方が怖いと言っていた記憶がある。
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