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「最悪…こんなことなら一人で帰れば良かったかも…。」
周りを見る勇気もなく司が怯えていると、ライトは、ぎゅっと司の手を握った。
「仕方がないですねぇ。
こうすれば…少しはマシでしょう?」
身体は細いと思っていたのに、ライトのあたたかい手は、ゴツゴツと骨張った男性のもの。
ライトと手を握るのも久しぶりだ。
大昔に握った時よりも大きくなっていたから、司は驚いていた。
「…うん。」
ライトは空き教室の鍵を閉め、階段を降りていく。
「暗いから、足元には気を付けてくださいね。
手は繋いでるとはいえ、転ばれたら苦労しますから。」
「わ、わかってるよっ」
ゆっくり階段を降りていくと、職員室の灯りがチラチラと見えてきて、安堵する。
「私もずるかったですね。
キミがこうなるのをわかってて、連れてきたようなものですから。」
「ライトさん!?」
「怒らない、怒らない。
せっかくの可愛い顔が台無しですよ?
もちろん、悪かったとは思ってますよ。
お詫びにちゃんと家まで送りますから。
これ以上怖い顔しないでください。ね…?」
職員室の前で、ライトは手を合わせて謝る。
本当にずるいと思ってしまう。
そんな風に可愛らしく謝られたら、つい許したくなってしまうのだから。
「もう…次、同じことしたら怒るよ?」
「ふふ、そうしてください。
…ああ、少し準備してくるので、ここで待ってて貰えますか?
ささっと着替えて来ちゃうので。」
「え?うん。」
待っている間、ちょうど職員室から出てきたのは女性の教師。
「あら、神崎さん、まだ残っていたの?」
「はい、部活で。」
「そういえば、聞いたわよ~?
桂木先生と、いとこなんですって?」
その女性教師は学校でも男子から人気の先生だ。大人の色気がすごい女性。
この先生もライト狙いなのだろうか。
自分と比べて、色々な意味で悲しくなってくる。
「そうなんですよ。」
「じゃあもしかして、これから送ってもらうの?その方がいいかもしれないわね。
最近危ないから。」
「先生も気を付けてくださいよ。」
「ふふ、私は車だから大丈夫よ。
それじゃあ、また明日ね。」
ひらひらと手を振って、去っていく後ろ姿を見送った。
入れ代わるようにライトがやってくる。
「司、帰りますか。」
私服に着替えて髪を下ろした姿は、酷く美しい。
司は頷き、ライトの車に向かった。
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