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ライトの車に乗り込んだ。
助手席に乗り込むと、なんだかいつもと違う、ふわふわとした気持ちになった。
自分の家の車とは違う匂い。
それどころか、ライトの車に乗るのはこれが初めてだ。
「遅い時間まで部活で、疲れましたか?」
「うん、絵を描くのは楽しいけど、集中して疲れたかも。」
走る車から見える風景は、いつも歩いて見る風景とは違って見えて、少し不思議な気分になる。
「着くまで寝てても構いませんよ?」
「うん…でも、なんかもったいないし…」
あくびを噛み殺しながら言えば、ライトが苦笑する声が聞こえた。
「もったいないって、どういう意味でしょう?
寝る子は育つとか言いますから、疲れている時こそ、休憩をするのは大事なんですよ?」
こういうところから、子供扱いされてしまうのだろうか。
あの女の先生が、ライトの助手席に座っていたとしたら、一瞬にして車内は大人の雰囲気に変わっていたのかもしれないが。
信号待ちだったのか。
ライトはあくびをする司の髪をもてあそぶ。
さらさらと流れる手が心地よくて、睡魔が襲ってきた。
「あと少しで着きますよ。
ふふ、ちょっとだけ…家に着くのがもったいなく感じてしまいます。
キミの言っていたことはそれですか?」
ライトが司に目を向けた時には、司は眠気から規則正しい寝息を立てて眠っていた。
ライトは呆れたように笑みをこぼす。
「まったく…高校生になって少しは成長したかと思いきや、まだまだ子供ですね。」
その後、ライトに起こされた司は、羞恥心で半ば発狂しながら家に逃げ帰った。
ちゃっかりついてきたライトは、司の家にしっかりと挨拶をして、結局夕食までいただいてから帰った。
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