<中>たまらなく好きだ!

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「昨日の紙……って、ゴミ?」 「ゴミって。まあでも、そうか」  賢治郎は困ったような顔で笑った。  ……なんてことだ。  その存在を忘れているところに、思い切り突き返して高笑いしてやろうと考えていたのに。これじゃあ計画倒れだ。  でも今日の賢治郎はなんだか大人しい。これならば、勢いに任せて突き返しても、一矢報いることが出来るかも知れない。私は意を決する。 「これ! これでしょ! あんたに渡してやろうと思って持ってきたよ!」  私はポケットから紙くずを取り出すと、それを握った拳を賢治郎の前に突き出してみせた。流石の賢治郎も驚いた様子だ。 「……それ、昨日の、紙?」 「そうだよ!」 「それは、その、俺にくれるのか、それとも……返すのか?」 「はあ? 一緒でしょ?」 「なるほど……紗綾、お前さては、な?」 「読む……?」  私はキョトンとして首を傾げた。その顔を見て、賢治郎が声を出して笑った。いつものように目を糸みたいにして。  なにがなんだか分からず、私は取り敢えず、手のひらで丸まった紙くずを指先で解いてみた。何の変哲もない、ガムの銘柄が印刷された小さな色紙だ。 「裏」  一言だけ発した賢治郎に促されるまま、プリントのない白地の方へ裏返してみる。するとそこには――。 『すきだ』  の三文字。  濃ゆいボールペンで記されていた。  え!? なにこれ!?
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