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<下>こっちの身にもなってみろ!
これって昨日の紙くずだよね?
あの冗談めかして渡されたゴミだよね?
なんで、なんでそんなものに、賢治郎の字で『すきだ』とか書いてあるわけ?
「読んだ?」
「え!? あ、うん……」
「昨日読めよ」
「いや分かるか! こんなの……」
本当になに考えてるの。
これってさ……「告白」ってことで良いんだよね?
ガムの包み紙の裏が、ラブレター的な。
……こっちの身にもなってみろ。
そんなの、分かるわけないじゃん。
「ごめん、そうだよな、分からないよな」
賢治郎が深く息を吐いた――と思ったら、素潜りでもするみたいに、今度は大きく吸い込んだ。そして発した。
「俺、紗綾のことが好きだ!」
その言葉が耳に届いた途端、私の目からは涙が流れた。
喜び、驚き、感激? そんなものに変換されるよりも先に、勝手に反射的に溢れ出たのだから仕方がない。
「お、おい、なんで泣くんだよ!?」
「……うるさいバカ」
いやそこは「あたし、嬉しくてッ……!」でしょ。私の馬鹿。
本当に私達は、紙くずで告白だの、告白の返しが馬鹿だのと、幼稚なコミュニケーション手段しか知らない。ある意味お似合いだね。
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