プロローグ:『電脳セキュリティ』

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プロローグ:『電脳セキュリティ』

「えー、あと一個がわかんない! 亜由わかる?」 「ん? どれどれ」  放課後、高校近くのファミレスに入った私は、メニューの裏に付いている間違い探しをしていた友達からのSOSを受けてメニュー表を受け取った。 “確か、最後のひとつが難易度おかしいって評判なのよね”  自身の方へ置き、全体を眺める。  間違い探しというのは一ヶ所ずつ確認するのではなく、全体を遠目で眺めて探すのが最も効率がいいからだ。 「雪だるまの帽子、プレゼントの数、もみの木の枝、クッションの色、窓枠の光、フローリングの向きに……リモコンのボタンだね」 「リモコンのボタン!?」  見つけた違いを片っ端から口にすると、ぎょっとした友達が身を乗り出して覗き込む。 「これはわかんない、言われなきゃわかんないやつ……」 「見つかって良かった」 「むしろなんでわかったのってレベル」  愕然としながら再びファミレスのソファに沈んだ友達は、そんな言葉を口にして。 「ま、そういう仕事してるからね」 「そうでした、亜由ってば電脳セキュリティのメンバーなんでしたぁ……」
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