プロローグ:『電脳セキュリティ』

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 どこか虚無りながらそんなことを呟く友人に思わず笑ってしまった。   ――『電脳セキュリティ』  大手企業の参入により、爆発的に広がった『CC』と呼ばれる電脳世界。  老若男女関係なくほぼ全ての人が『アバター』と呼ばれる自分の分身を電脳世界に持ち、当たり前のように過ごすようになった。  現実世界の私と、電脳世界の私。  それらは必ずしもイコールにする必要はなく、電脳世界に自分の分身を作るも良し、なりたい自分を性別どころか種族を超えて作るも良し。  天使やエルフなんてものもいれば、恐竜にだってなんでもなれる。  お手軽さと、そんな夢が詰まった仕様も後押しし、今では電脳世界で仕事につき生計を立てる人だっているほどだ。  そして、なんでもありなバーチャル空間だからこそトラブルだって起きやすい。  対人同士のトラブルはもちろん、違法アバターや複垢、そして愉快犯による迷惑行為なんてものも起こったりする。  そんなトラブルに対応する、いわばこの『CC』内の警察的なポジションにいるのがまさに『電脳セキュリティ』で、私こと浅賀亜由が働いている会社なのだ。  
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